(3) 表皮細胞分化の分子機構 The shoot epidermis differentiation

Arabidopsis2005-06-06

高等植物の茎の先端(茎頂)shoot apexでは細胞が層状構造をしており,最外層(L1層)は各器官の表皮epidermisへと分化します.
しかし,層状構造の分子的基盤や表皮細胞分化に関わる遺伝子の発現制御機構はほとんど研究されていませんでした.
表皮というのはかたち作りにおいてどのような意味があるのでしょうか?
私たちはこれまでの研究で,シロイヌナズナの茎頂L1層に特異的に発現する遺伝子を見つけ(Abe et al. 1999),その上流プロモーター領域の解析から,L1層における発現に必要なシス配列“L1ボックス”を同定するとともに、ホメオドメインhomeodomainをもつ転写因子ML1がこの配列に結合することを明らかにしました(Abe et al. 2001).
さらに,それをコードするML1遺伝子と高い相同性を示す遺伝子PDF2を単離し,これがL1層で発現すること,その遺伝子産物がL1ボックスに結合しうることを確認しました.
加えて,ML1, PDF2遺伝子の欠損変異体ml1-1とpdf2-1を単離し,それぞれ単独の変異体は正常に生育する一方,その二重変異株は表皮分化が著しく損なわれ,葉の表皮ができないという非常に興味深い表現型phenotypeを示すことを明らかにしました(Abe et al. 2003).
これらの転写因子がL1層や器官表皮に限定して発現する機構と,これらによって発現が制御される標的遺伝子の同定の解析を現在すすめています.
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文部科学省 科学研究費補助金 特定領域研究 (A)
「植物発生における軸と情報の分子基盤」ホームページ
http://www.kazusa.or.jp/ja/plant/pas/